Music Forceは、次世代の子どもたちを中心とした音楽教育について皆様のご意見をいただきながら、篠崎理事長が掲げる「守破離」の精神に基づいた、本来あるべき教育を追求し、社会に対しても訴えかけていきたいと考えています。
この広場は、皆さんからのご意見をいただく場であり、篠崎理事長をはじめとしたパートナーなどの考え方や活動状況を知ることができるコミュニケーションの場だ考えています。
《冒頭のマロ氏のお話》
日本とヨーロッパでは、子ともの教育は違うと感じている。
日本で音楽をするには音楽大学に行かねばならないという風潮があるが、ヨーロッパでは音楽院があり、年齢に関係なく学べる、つまり音楽は万人に対して平等なのだが、日本にはその意識がない。
また、日本では誰かと比較して判断されることが多く、コンクールなどで人と評価して自分の立ち位置が決められていく。
本来音楽は人生を豊かにし、共に人生を歩むためにあり、従って一生音楽をやめない子どもを育てる必要がある。
しかし、実際行われていることは、先生も親もコンクールや大学に入れることに一生けん命で、結局大半の子どもはどこかで音楽を断念させられる。
そういうことを無くし、音楽に一生向き合って生活できる場を創りたい。それが寺子屋。
日本では、一つの答えを導き出すことを教えているが、物事を発想することや憧れること、好奇心を持つことが全てのエネルギーだと思う。
ヨーロッパは基本口頭試験で、答えのないことを先生としゃべらないといけない。
音楽の試験でも自分が作り上げた音楽を提示(演奏)して評価される、つまり自己表現が評価される。
誰かの演奏に憧れて真似するのはありだが、単に再現するだけのコピーでは子供の発想は止まる。
考えることを教える場所として寺子屋を展開していく。
《ヴァイオリンの公開レッスン》
【生徒】 井口結唯(いでぐちゆい)さん。
パガニーニの難局を素晴らしいテクニックで弾かれる中学生でした。
【マロさんの指導】
〇素晴らしく上手に弾けているが、今まで練習したことをパーフェクトに弾いているだけではなく、自分から発信しないといけない。
〇楽譜に書かれている決められたものは守る必要があるが、そこからはみ出てくる世界をの自由に泳いで、それを表現して欲しい。
空は「青」と言うが、人それぞれに感じ表現する空の色は異なる。違う者を発想することが大事。 音楽には決まった答えはない 決まった答えを音楽は求めない、違う答えを出すこと
〇自分でイメージすること。音楽は想像力を与えてくれる。弾き時に自分なりに情景を想い浮かべ、それを表現することが大事。
〇作曲したパガニーニはイタリア人だけど、イタリアってどんなところなんでろう? 上手くなるためには練習ではなく、そういう好奇心が大事。
そして、例えば明るいイタリアの情景の中で、甘いものでも食べてるイメージを想像して弾いてみる。 音を弾くのではなく、景色を弾くといい。
マロさんが、ヴァイオリンの公開レッスン後に、先生方に向けて次のようにお話しされました。
レッスンする時は、悪いところを見つけるのは簡単であり、そこを直すのではなく、可能性を広げることが大事だと思う。
学校は様々なことを平等に進めていかなければならないだろうが、本当の平等は子どもたちそれぞれの個性を発揮させ、回りに発信させていくことだと思う。
オーケストラはまさにそういうことで、楽器が個性を持って、同時に音を出して成り立ってる。
個性が違う者が集まりながらも、一つのものが同時に進んでいくことができれば面白いと思う。
オーケストラでは個人の特性を目いっぱいだすことが大事で、メロディーを奏でている楽器がころころ変わるが、それ以外の人は必ず耳を傾けている、だから同時に動ける。
楽器それぞれの大事なポジションや役割が決まっているが、それぞれのパートは自分達の特性を表に出す。それが溶け合って素晴らしい響きを生み出していく。
だから、いろんな子どものそれぞれの個性をどんどん出させて、お互いに認めあうことを指導して欲しい。
マニュアルに無いことをマニュアル外のこととして物事を考えられれば面白いことが起きるはず。マニュアルの中に収めようとするとパンバンになってしまう。
親は練習しろとか勉強しろとか一切言わず、好奇心を持つことを教えられた。
そして、練習すれば世界中に友達ができるという目標を与えてくれた。
目先のことを達成することを言うのではなく、その先を見せる、示すことが大事だと思う。
欠点は直らないのだから、それよりできることをやった方が楽しいし、そうしていくことにより欠点がくるまれていき、やがてそれは長所となる。
ヨーロッパに行ってそれが大事だということがよく判った。
向こうは加点法だからいいところを提示することによって成績が上がっていく。
そして、自分の意見を言うことを求められ、何と何がそぐわないかを説明してくれて、その後は徹底してディスカッションが行われる。
正しいことを答えることではなく、違う世界があることを教えてもらった。
「横断歩道みんなで渡れば怖くない」はダメ、で終わるのではなく、そこからディスカッションして何故だめなのか、考える力を与えることが大事で、そうすると子どもたちは自立できる。
「守破離」という千利休の素晴らしい言葉があるが、この世界を子供たちが実現できれば新しい未来を創りだしてくれると思う。
音楽は「再生芸術」であり、自分ならではの発想で新しいものを生み出す姿勢が大切です。CDなどの録音は完成形を固定化してしまい、そこに頼りすぎると「自分で探す旅」を省略しかねません。
今の時代は便利になりすぎ、答えが簡単に手に入ります。しかし、子どもたちが模倣だけで終わってしまうことに危機感を覚えます。
日本の教育は自由な発想を恐れがちです。これからは「答えのないこと」を学ぶ姿勢が必要です。そうでなければ、人は社会の「部品」になってしまうからです。AIにできない表現を生み出せる人間を育てなければなりません。
便利なデジタルツールも良い面はありますが、失われているものも多い。手間をかけて学ぶことの大切さを忘れてはいけません。
もし音源の模倣だけで済ませるなら、クラシック音楽を「再生芸術」として続ける意味は薄れてしまいます。
私はヨーロッパで音楽の「生きる力」を学びました。極限状況の中でも音楽が人に力を与える。それこそが音楽の「Force(力)」です。
こうした理念に共感する人が増えていけば、きっと世界は変わる。その希望のもとに、まずは「移動寺子屋」として活動を始め、多くの人が「心の大切さ」に気づける場を作りたいと思います。 Music Forceは、「音楽に何かを感じられる人間」を育てることを目指しています。